元・テレビマンが教える、Web動画ディレクション入門 〜動画制作の流れを知ろう〜

投稿日: カテゴリー: Web動画ディレクション, 動画制作入門

 

さて、「入門」と銘打ったからには、本当に基本的なところから紐解いきたいと思います。

まずは、動画を制作するにあたっての受注から納品までの全体の流れについて。
動画制作は、大きく分けると以下のようなブロックに分けることが出来ます。

1)企画・構成

2)撮影(編集素材の作成)

3)編集

4)ポスプロ

5)納品・拡散

なんとなく、ではわかっていても、その一つ一つをキチンと理解した上でディレクションできてる人は少ないと思います。

カメラで撮って、編集して、音楽入れたら良いんでしょ?
ってワケにはいかないのが商用動画ですから。

すごく噛み砕いて言うなら、動画制作は料理に似ています。

1)メニューを決めて、レシピを準備する(企画・構成)

2)料理に必要な食材を集める・場合によっては下ごしらえする(撮影)

3)その食材を調理する(編集)

4)味付け、盛り付けをしてお客さまに出せるようにする(ポスプロ)

5)お客さまに提供する(納品)

多くの人は、2)と3)だけで動画制作だと思ってます。
もちろん、間違いじゃない。

でも、それは本当にプロの仕事か?と聞かれると疑問が残ります。
何故なら、メニューも決めず、レシピも見ず、冷蔵庫にあっただけの食材で、味付けや盛り付けをしない料理を出すようなものだから。

そこが、趣味動画と商用動画の大きな違いです。
自己満足か、他己満足か、と言っても良いかもしれませんね。

1)企画・構成

普段、レストランに行ったら、メニューが出て来ますよね。
お客さんはそこから食べたいものをオーダーして、料理人がそれをつくる。
これは普通の流れです。

動画制作においても、「お客さまが何を食べたいか」は重要です。
お客さま=クライアントさんですね。

それこそ一口に動画と言っても、いろんな種類のものがあります。

単純に、実写か、アニメーションか、は一つの大きなジャンルの違いですが、和食と中華くらいの差があります。
そして、同じ和食でも、お吸い物と炊き込みご飯ではぜんぜん違う料理ですよね?

動画だって同じです。

同じ実写でも、例えばミュージックビデオとドキュメンタリーは全然違います。

打合せの段階、つまり、メニューを伺う段階で、お客さんの食べたい物を明確に出来ないと、このあとのディレクションが大変になります。
豆腐懐石が食べたい客に麻婆豆腐を出して、喜ばれることは稀でしょう。
スゴく極端な例ですが、実はこれ、意外と起こりうることなのです。
それをさせないのがディレクターのチカラなのです。

企画・構成の段階で、クライアントさんからしっかりとしたヒアリングが出来るか、まずはそれを一番大切にしましょう。

2)撮影・編集素材の作成

メニューが決まったら、それをつくるための食材が必要です。

カレーライスをつくるのなら、牛肉、たまねぎ、人参、じゃがいも、カレー粉くらいは用意したいですよね。
もちろん、ナスとひき肉のカレーと言われたら、ナスとひき肉を用意します。

ここでいう撮影とは、つまり動画を制作するための食材集めにあたります。

編集素材の作成、という書き方をしたのは、素材が実写で無い場合もあるからです。
例えばイラストアニメーションでつくる場合はイラスト素材が必要になります。
このときディレクターが手配するべきはムービーカメラマンではなく、イラストレーターということです。

八百屋にお肉は売ってないし、肉屋にナスはありません。
そして、スーパーに行けば何でも手に入るかもしれませんが、周囲にはもっと安くて美味しい食材屋がたくさんあるのです。
その店を見極め、食材をきちんと予算内で仕入れられるかも、ディレクターの腕ひとつと言うわけです。

この仕入れの話なんかは、撮影の章などでもっとしっかり掘り下げたいと思います。

撮影(素材集め)時に大事なことは、編集がつつがなく進むように、納品形態から逆算して、しっかりとその準備を整えるということです。
そのため、撮影が終わった時点で、ディレクターのアタマの中には動画の完成映像が流れていなくてはなりません。

ま、なんとかなるでしょ。
で、なんとかなるのは趣味動画まで、ということになります。

3)編集

食材がそろったら、それを調理していく。
じゃがいもを刻み、たまねぎを炒め、カレーライスのカタチを作っていく。
その工程が、いわゆる編集に当たります。

近年はPCの性能もあがり、優秀な編集ソフトも多数出てきました。

包丁と鍋さえあれば、たいがいのものは調理出来るのと同じで、いまや編集そのものは極々簡単になったと言えます。

誰だって動画が作れる時代になった、というのは、このことです。

ただし、ここでの編集は、あくまで「鍋の中にカレーをつくる」までを言います。

もちろん、そのまま食べれないことはない。
味も大きくは変わらないでしょう。
正直、ここでは素人とプロの差を大きく出すことは難しいです。
特に、カレールーを溶かすだけ、の作業になった場合は。

もちろん、厳密に言うと違うのですが・・・昔、格付けのテレビ番組で、井筒監督と素人の映像作品のどちらが本物か、を当てる企画で、井筒監督が選ばれなかったりするところです。
ごく一部の映像編集では見分けが付かない。

このあたりの話も編集の章で掘り下げたいところです。

ただ、プロならより美味しく、より美しい盛り付けで提供したいと思うのが普通では無いでしょうか?

そういう意味では、編集のその先があるということを覚えておいて欲しいと思います。

ちなみに、このとき「試写」と呼ばれる作業を入れることになります。
鍋の中にあるカレーの味見のようなものですね。

クライアントに「ちゃんと予定通りの味を出してますよ」と提示しながら進めることで、納品後に「こんなもの食えるか!」といったクレームが起きないようにしておく方法論です。
ここでも、クライアントからのフィードバックのもらい方にコツがあったりします。
その詳細もまた今度。

4)ポスプロ

ポスト・プロダクションを略した言い方がこちらです。
後編集なんて言い方もありますね。

ここでの作業としては、BGMやSE(サウンドエフェクト)などを入れる音楽効果作業や、ナレーションを入れたり、整音を行うMA(マルチオーディオ)スタジオでの作業がメインになります。
最近流行りのカラコレ(カラーグレーディングとも言う)なんかを含むこともあります。

正直、趣味と商用の差が大きく出るのはここからです。

お皿にライスを盛り付け、お鍋の中のカレーをキレイに注ぐ。
見た目にも美しい仕上がりを提供するのが、このポスプロの部分になる。
そういうことです。

その理由についても、ポスプロの章で詳しく説明したいと思います。

5)納品

ここまで来たら納品です。

この時点で、クライアントから修正が入ることはまず有りえません。
いや、あってはならないのです。

もし、それ(修正)があったとしたら、どこかで自分のディレクションがまずかったのだと思ってください。

カレーライスって言っていたのに、いつのまにかシチューになっていた。
料理ではあり得ない話ですが、動画制作においてはありえない話ではないから怖いところです。

試写の途中でクライアントの言うがままに修正を繰り返していたりするとこうなるケースがあります。

あと、稀にですが、カレーライスをオーダーしておいて、途中で麻婆豆腐に変えろと言い出す客もいます。
理不尽です。
そんな客にはどう対応すればいいか?
そのあたりも動画制作ディレクターの腕の見せ所です。
この話もぜひまた今度。

さて、今回はざっくりと動画制作全体の流れを見てきました。
次回以降では、各項目のノウハウをもっと詳しく解説していこうと思っています。

自分が動画制作ディレクションをやっていくなかで、陥りやすいミスなんかも見えてくるかもしれませんね。

その前に、少しだけ「制作費の見積もり方」をお話しておきましょうか。

では、次回もぜひ、お楽しみに。